柔道界の課題解決は
「精力善用・自他共栄」の精神で
向井廣志
令和5年4月の千葉県柔道連盟役員総会で、石井一夫前会長の後任として選出され、就任2年目になりました。嘉納師範の柔道理念である「精力善用・自他共栄」の精神のもと、微力ではありますが柔道界の課題解決へ、積極的に取り組みたいと考えています。
今夏はパリオリンピックが開催されました。金メダル20個を含む計45個のメダルを獲得した日本勢の活躍は、記憶に新しいところです。柔道競技には、本県にあるSBC湘南美容クリニック所属の永山竜樹選手(男子60㎏級=銅メダル)と⻆田夏実選手(女子48㎏級=金メダル)の2名が出場し、中でも⻆田選手は地元の県立八千代高校柔道部出身です。本県に関係する選手らの勇姿を目の当りにし、感動と勇気をもらった「忘れられない夏」となりました。
「柔道人口増加と柔道離れ減少」へ向けての方策
さて、現在、柔道界で最大の課題は柔道人口の減少でしょう。本県でもその傾向は確実に迫ってきております。約30年前、県内の高校生の団体戦には150を超える参加校がありました。しかし、近年は55校前後となり約3分の1まで減っております。当時、まだ女子の試合はありませんでしたが、現在は25校ほど参加しているものの、全体が減っていることは明らかです。高校だけでなく、中学校でも同様に柔道部の数と部員数は減少傾向です。加えて小学校の児童でも数は減り、県内各道場への入門者も少なくなりました。それに伴い、各地区柔道会における昇段審査会受験者数も当然のごとく減り続けています。
昨年11月に開催された全日本柔道連盟の「加盟団体会長会議」では、柔道人口の減少対策として「長期育成指針」が示され、今年2月に開催された講道館の「段位推薦委託団体会長会議」においても、入門者数および昇段者数の減少についての説明がありました。
柔道に関わる私たちは、様々な方策を考える必要がありますが、本連盟では未経験者を対象に親子で参加できる「親子柔道教室」(仮称)を千葉県総合スポーツセンターと共同で検討中です。柔道に興味を持つ子どもたちや、お子さんに柔道をやらせたいと考える保護者もいるのではないだろうか、そんな方々に家族全員で柔道を楽しむ機会として、親子そろっての参加やお子さんだけの場合でも保護者が安心して応援できる場を提供したいという想いからの立案です。本連盟には優秀な指導者が多数います。初年度は来年の夏休みに千葉市内が中心になると思いますが、50人前後から始めたいと思っています。その後は県内の他の地域にも呼び掛け、柔道を通しての親子の絆、ともに稽古する友や指導者との出会いから、明るい社会が構築されるように貢献出来ればと意気込んでおります。
運動部活動の地域移行について
もう一つ、普及活動で力を入れているのが運動部の地域移行への取り組みです。「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」(令和4年6月スポーツ庁)において、令和5年度から令和7年度末までを改革集中期間と定め、3年間に全ての休日の部活動を地域が担う方向性が示されています。本県でも中学校の柔道関係者を中心に道場連盟等の呼びかけも実り、昨年開催された中学校の各種大会に県内各地域から道場やクラブの参加がありました。今までは、通学する学校に柔道部がない場合は大会に参加出来ませんでした。それが障害となり、中学入学後に他の運動部に移っていく子どもが少なからずいましたが、その子たちにチャンスが与えられたのではないかと思っております。
今回、道場やクラブのチームが中体連主催大会に出場できるようになったことで、小学生の経験者が中学校でも柔道を継続できるようになりました。私たちとしては、その子どもたちが、そのまま高校でも柔道を続けていくように引き継ぎたいと思っています。そして最後は、その先の大学や社会に出てからも、「生涯を通して柔道に親しむ」きっかけになって欲しいという願いで取り組んでおります。
複雑化するルールに対応できる審判員の育成
話はオリンピックに戻りますが、今回、気になることがありました。柔道を含め、様々な競技における判定の問題です。各メディアは「誤審」という表現ではなく、「不可解な判定」「疑惑の判定」などと報道していました。国内や本県でも大会の前に審判員は打合せ会議を必ず実施し、大会での審判規程や申し合わせ事項を事前に確認しています。国際柔道連盟で選ばれた審判員が裁くオリンピックでも当然同じことをして、判定の標準化を図っていると思います。ですが、現在の国際ルールは、関係者でも理解するのが大変なほど頻繁に改正が行われ、審判員として常に知識を高め、技術の向上に努めていても、「不可解」は判定が出てしまいます。
その様なことを無くすためには、質の高い審判員の育成と、複雑なルールをかみ砕いて分かり易く解説してくれる人材が必要ではないかと思っています。本県では県内の学生柔道連盟に所属する10大学の3、4年生約80人に毎年、全柔連の公認指導者資格Cと審判員資格Cライセンスを取得させています。卒業後、本県に残る者だけでなく、故郷や新しい都市に旅立つ者たちにも、それぞれの場所で身に着けた資格を活かして柔道界に尽力してもらいたいという思いからです。その中から世界で活躍する審判員が輩出されるかもしれません。さらに言えば、大会等で下される判定について、誰にでも分かり易く伝えることが出来る人材も出てきて欲しいものです。今後も、ルール改正は引き続き行われると思います。私見ですが、他の競技で導入している「チャレンジ制度」の導入も考えられるのではないでしょうか。審判員は何よりも選手が納得する判定をして欲しいと思います。その様な審判員が増え、世界中の多くの人が柔道を楽しく観戦出来るような環境が整っていくことを願って止みません。
(千葉県柔道連盟会長)









